着物初心者のTPOガイド
日常着ではないまでも、着物はやはり日本のアイデンティティを感じさせてくれ、世界に誇れる民族衣装です。
晴れの日に着物を着たい方が、この頃増えてきています。
でも、「実は着物をよく知らない」方が圧倒的に多いのです。
このサイトでは、着物についてのミニ情報を初心者でもわかりやすいようにお伝えしようと思います。
知っておくと便利、恥をかかないで済むといったレベルです。
もっと詳しく知りたい方は、専門のサイトが出ていますから、そちらを参考になさってくださいね。
着物の種類と着ていく場所
着物の種類は、用途による分類と、柄(がら)、生地による分類があり、それによって着ていく場所も違います。
昨今では、浴衣を普通の街着として着たりもするので、以前ほど厳しい仕分けはなくなってきました。
ですが、それでも基本的なことを知らずに着てしまうと恥ずかしい思いをすることになりかねません。
ここでは、
■着る目的や用途による分類と、
■着物の絵付けや柄、染めの種類そして
■着物の生地は?などから着物を見てみます。
ちょっと面倒かも(;’∀’)
でも、これだけ抑えておけば、
自信を持って着物を着れるはずです❤
着る目的や用途による分類
着物はどのような場所に、どのような目的を持って着るかで「何を着るか」が違ってきます。
正装として、結婚式、成人式、卒業式などお祝いの場所で着る
結婚式では、花嫁の場合の着物は特殊ですので、ここでは省きます。
招待された場合、未婚と既婚、あるいは年齢的なもので違いますし、親族ではまた違います。
未婚者の正装
振袖が未婚者の正装です。
振袖には2種類あり、袖丈の長さが違います。
大振袖
手を下げると、足のくるぶしまであるほど袖丈が長い着物で、最も格調が高いものです。
中振袖
袖丈90~95㎝ぐらいです。柄は総模様のほか肩裾模様、付け下げ風など色々あります。
小振袖
訪問着より、やや袖丈を長めにしたもの
袖丈によって格式が決まるって、日本ならではの文化ですね。
小振袖ぐらいですと、外出着にもなるので、使い勝手は良いかと思います。
後に述べる訪問着は未婚でも良いので、長く着るには訪問着をあつらえても良いかと思います。
既婚者の正装
既婚者の正装は黒留袖です。
黒留袖は黒紋付江戸褄模様(一般には江戸妻と呼ばれる)といわれるもので、改まった儀式の際の既婚者の礼装です。
家紋が入っています。
家紋には三つ紋と五つ紋があり、格式が高いのは五つ紋です。
五つ紋にしますと、地色を色物にした色留袖も同じ格式になります。
紋の位置は次の通りです。
■五つ紋は、前に二か所、後ろに三か所の家紋
■三つ紋は前には家紋がなく、後ろ三か所のみです。
実際の着物をみてみますと、縫い目があっても柄が繋がり、染め抜きの紋が付いていますから、格式のほどがうかがわれますね。
尚、昨今はレンタルで済ます場合が多くなりました。
その場合は自身の家紋を付けることができないため、葵や桐などのグレードが高いものが使われていることが多いようです。
家柄を前面に出すことが少なくなった現代では、それも良いかと思います。
レンタルといえど、ご自分の家紋を付けたい場合は、家紋シールなどが販売されていますから使うと良いですね。
訪問着
訪問着は一般的な正装です。
未婚、既婚の別なく着ることができます。
絵羽柄(縫い目があっても、柄がつながっている)が原則。
紋は染抜きの三つ紋か、一つ紋となります。
訪問着は、先に仕立ててから柄付けをするために、絵羽柄になるのですが、全体に大きく図柄が構成され、華やかになります。
用いる帯は袋帯です。
すこし改まったパーティーなどで着る
おすすめは訪問着です。
付け下げでも構いません。
付け下げとは、訪問着と異なり、先に柄付けされたものを仕立てます。
仕立て上がりを想定して、染められています。
模様が、肩山や袖山を頂点として、前身ごろ、後ろ見ごろの両面に上向きに配置されるように描かれています。
付け下げには小紋もありますが、小紋柄であっても、縫い目で模様が途切れることはありません。
茶席で着る
茶席で一番無難なのが、色無地の一つ紋です。
無地ではあっても、織り方で柄が入っているので、奥ゆかしくなりますし、時期を見なくてよいので範囲が広がります。
季節をめでるのもお茶の作法ですから、花柄などもよいのですが、季節外れにならないように気を付けましょう。
実際に花の咲く時期よりも少し早めに着ることを心がけると、失敗がありません。
初釜、利休忌などの茶会は、格式が最も高いので、色留袖、訪問着、色無地の染抜き一つ紋か三つ紋とします。
親しい方とのお茶会は、訪問着や付け下げ、色無地や江戸小紋など
普段のおけいこは、格式張らずに普段着でもよいです。
紬(つむぎ)は、どんなに高級でも普段着なので、お茶会には着ていけません。
ですが、普段のおけいこなら大丈夫です(ただし、お茶の先生の判断によるとは思いますが)。
お出かけに街着として着る
街着はそれなりに制約がありましたが、今は浴衣さえ街着なります。
自分が気に入った着物を着て、楽しく出かけましょう。
小紋・・・格式的には、礼装の下になり、普段着として着ます。
全体に細かい模様が入っていることが名前の由来です。
訪問着や付け下げなどが、肩が上になるように模様づけられるのに対し、上下の別なく、模様が入っています。
そのため、礼装、正装としては着用できませんが、江戸小紋だけは、着用が可能です。
江戸小紋は、江戸時代に大名が裃(かみしも)の柄として付けた模様で、絹織物です。
遠くから見たときに無地に見えるよう模様を細かくして高度な染色技術を要し、大名の家によって柄が定まっていたので(定め小紋)、今でも正装として通用しています。
このサイト(着物初心者が知っておきたいミニ情報)のタイトルヘッダーの小紋柄は、「大小あられ」といい、薩摩島津藩の定め小紋でした。
私が20歳前に母に買っていただいた着物で、大切にしています。
小紋は、江戸小紋のほかに京小紋、加賀小紋などがあり、柄の大きさや糸の種類が様々で粋に楽しく着ることができます。
自宅などで、普段着として着る
明治、大正時代までは、日常普通に和服を着ていました。
その後、活動的な洋服が主流となりましたが、今では趣味で気に入った和服を着る方が少しずつ増えています。
気軽に着れるのは、紬。
模様では小紋、絣(かすり)や黄八丈などの草木染、そして浴衣です。
紬(つむぎ)
蚕の繭(まゆ)から糸を取り出し、よりをかけて丈夫な糸に仕上げて織った絹織物を言います。
深い味わいを持ち、着物通の人が好むといわれていますが、カジュアルなので、正式な場所には着られません。
大島紬、結城紬などがあります。
絣(かすり)
紬が糸を言うのに対し、絣は柄(模様)のことを言います。
前もって染め上げた糸(経糸、緯糸、またはその両方)を織り上げて模様を作ります。
日本では、伊予絣、久留米絣、備後絣が3大絣として有名です。
浴衣
浴衣は風呂上りなどに着るものでしたが、自宅で洗うことができ、価格も安いことなどから人気です。
昨今では、外出で着ることが多くなりました。
下着をつけて着崩れしないような着方を学び、茶つぼや文庫などに帯を結んで街に繰り出す若い女性が増えています。
着物の絵付けや柄、染めの種類
絵羽
絵羽柄とは、縫い目によって絵が途切れないようになっている柄のことです。
留袖、訪問着、付け下げなど。
小紋
江戸小紋や京小紋、加賀小紋などがあります。
友禅
江戸時代、今日の絵師である宮崎友禅斎が染めたことに由来します。
曲線的で、簡略化された動物や風景、器などの模様が描かれます。
京の技法が加賀の金沢に持ち込まれ、加賀友禅として、独自に発展を遂げました。
華やかで美しく、絵師の技量と相まって、日本を代表する染の粋ですね。
紅型(びんがた)
沖縄を代表とする染色技法のひとつで、琉球時代は王族や士族の衣装として染められてきました。
一般的には型染で、高価なものになると、両面染めの高度な技術が使われています。
着物の生地は?
どのような布で出来ているのか、着物に用いられる生地についての基本知識です。
正絹
正絹というのは、絹だけからなる糸またはその織物のことを言います。
もう少し詳しく言うと、繭から取り出す切れ目のない糸を本絹と呼び、本絹以外のものを寄せ集めてよって糸に仕立てたものも正絹になります。
絹は、柔らかくて軽く、吸湿性、通気性に富みます。
また、美しい光沢があり、重ね合わせると矢も防ぐことから強く丈夫な生地として古来より珍重されてきました。
半面、水に弱く、日光で変色するなど、取り扱いに注意が必要です。
浴衣以外の普段着から訪問着まで用いられ、なじみのある生地ですが、汗や汚れに対するメンテナンスを考えて、昨今はポリエステルの生地も好まれています。
ウール
羊毛製です。
暖かく、着やすいのが特長で、普段着や街着に適しています。
絣模様のウールのアンサンブルなどは、若い方が気軽に着れるので初心者向きとも言えます。
ただ、絹と違い、少し重めです。
また、普段着用なので、価格が安く求めやすいですが、手放して売る場合はあまり値が付きませんし、引き取ってもらえない場合もあります。
好きな柄を純粋に楽しむのがいいいいですね。
ポリエステル他
昨今はポリエステル製が多くなっています。
レンタルの訪問着でもポリエステルが普通にありますし、よく見ないと正絹かどうかわからない場合がありますね。
正絹とは光沢の質が違い、肌触りも違いますが、遠目にはわかりません(着慣れている方を除いて)。
汚れやしわに強く、価格も安いので取りつきやすい素材だと思います。
ただ、洋服でもそうですが静電気が起きやすく、冬場の乾燥時期には要注意です。
着物初心者TPOまとめ
初心者の場合着物を意識するのは、結婚式、卒業式、七五三などかと思います。
正装には何がふさわしいのか解ったところで、いざ求めるとなりますと正直なところ決してお安くはありません。
自前でしっかり用意したい場合は、信頼できる呉服屋さんに訪ねてみることをお勧めします。
ただ、経験上大変目移りします。
だって、次から次と良いものが出てきますから。
帯も合わせますと「自分にご褒美しちゃおう!」と思うくらいの金額になってしまいます。
「取りあえずその儀式さえ終われば」という気持ちの場合は、レンタルや通販の着物初心者セットのようなもので切り抜けるのも良いと思います。
このサイトでも随時取り上げてみようと思います。
最後までお読みいただき、
ありがとうございました